研究概要 |
炎症性腸疾患は,主に若年者の下部消化管を冒す突発性慢性炎症性疾患であり,潰瘍性大腸炎とクローン病に分類される.今だ病因は不明であるが、一卵性双生児研究、高家族発症率から,遺伝的要因の発病への関与が明らかな多因子疾患と考えられている。99年欧州より、罹患同胞対を用いた連鎖解析で染色体6番HLA領域の(LODスコア4.0)IBD感受性遺伝子が存在することが明らかとなった。本申請者らは、本疾患で多数の多型マーカーを用いて日本人、英国人についてassociation mapping(case-control study)を行ったところ、ともにHLA領域中心に最強の相関を示すことを確認した.しかし、これ以上多型マーカーを増やしてmappingを行っても、強い連鎖不平衡のためmappingは不可能と判断した。そこでHLA遺伝子群から候補遺伝子を絞り込むために、臓器特異的な遺伝子発現情報を利用することにした.これは、消化管特異的な炎症を示す本疾患の感受性遺伝子は、消化管局所に発現しているという仮説に基づいた戦略である。 今年度は,HLA領域135遺伝子について,RT-PCRを用いて,各種臓器由来のRNAをsampleとしてHLA領域遺伝子の発現プロファイルを完成させた.その結果,HLA領域135遺伝子中,消化管に比較的特異的発現を示す4遺伝子,皮膚のみに発現を示す1遺伝子,脳のみに発現を示す1遺伝子を同定した.このことは,炎症性腸疾患のみならず,HLAに強い相関を示すナルコレプシーや尋常性乾癬などの疾患感受性遺伝子を特定していく意味でも興味深い結果であった.
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