研究概要 |
【目的】薬効および副作用発現の遺伝的背景を把握することにより、個人に最適化されたオーダーメード治療を確立し治療効果の向上や副作用の軽減を図る。薬剤の解毒および排出に関わる分子の遺伝子多型は薬剤反応性や副作用発現に大きな影響を持つ。本研究では、排出系機構の実体であるABCトランスポータ遺伝子をモデル系とし、遺伝子多型に基づいた薬効・副作用の予測を行う。 【本年度の成果】(1)MRP2遺伝子について35個のエキソンと周辺イントロンを解析し、エキソン部に4か所、イントロン部に6か所、プロモーター領域4kbに10か所の多型を同定した。(2)小児白血病患者におけるMRP2遺伝子多型と副作用の関連についてメソトレキセートを中心に解析した。(3)MDR1およびMRP2遺伝子プロモーター領域の多型と遺伝子発現量に相関を見いだした。レポーターアッセイを用い、MDR1遺伝子発現量に影響を及ぼす多型の効果を解析した。 【本年度達成できなかったこと】現行のがん治療の多くは多剤併用療法であり、特定の薬剤の副作用と遺伝子多型の明らかな相関を証明することが困難であった。顕著な薬効・副作用を示す症例を積極的に収集することが必要と思われる。 【今後の獲得目標】(1)MRP1,3,4遺伝子の多型収集:MRP2遺伝子と同様、全塩基配列の決定により多型の収集を行う。(2)遺伝子多型と薬剤応答性・副作用発現の関連解析の拡大:薬剤の血中濃度、尿などへの排泄量、腫瘍細胞の減少速度、長期寛解率、血液生化学データなどと多型との相関を解析する。(3)遺伝子発現の個人差の分子的背景解析:エピジェネティックな機構による異物排出系の個人差を検討する。MRP1,2,3遺伝子のプロモーター領域CpG部位のメチル化状態を定量し、発現量の決定に重要な部位を特定する。
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