研究概要 |
本研究の目的は,多数の遺伝子のコピー数を1回の解析で同定できる新しい方法(間期核spectral FISH法)を開発することである.そして最終的には,癌の病型ごとに病態・悪性度に関連した重要な遺伝子をできるだけ多数選定し,それらのコピー数の異常を包括的に検出できる癌ゲノム異常の解析法を確立する. 当該研究は,まず乳癌を対象に開始した.乳癌では既に多数の増幅遺伝子が知られている.その中でも,FGFR1(8p11),MYC(8q24),CCND1(11q13),HER2(17q21),ZNF217(20q13)の5つの遺伝子が,比較的高頻度に増幅していることが報告されている.これら各遺伝子を含むBACクローンを選定し,4種類の蛍光色素を用いて異なる組み合わせになるように直接標識した.これらの標識化合物を混合しプローブとして正常分裂中期染色体を対象にspectral karyotyping (SKY)法と同じ原理でスペクトル解析によって蛍光シグナルを検出した.この際,各遺伝子プローブに対応した蛍光色素の組み合わせに特有なスペクトルパターンを識別させ,その遺伝子ごとに指定した固有の疑似カラーで表示するようにスペクトル同定アルゴリズムを設定しておいた.その結果,それぞれの染色体上の局在に一致して異なる色調でシグナルを識別することができた.また,同じプローブで乳癌細胞株(MDA-MB-453)の間期核を対象として同様な方法による解析を行った.その結果,一回の解析で同時に5つの乳癌関連増幅遺伝子それぞれについて,異常なコピー数を包括的に決定することが可能であった.細胞単位に一回の解析でコピー数の異常を包括的に検出できる方法として間期核spectral FISH法を確立し,その有用性を評価できた.現在は対象を広げ,他の種類の癌についても間期核spectral FISH法を検討している.
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