研究概要 |
(1)大腸菌のHis-Aspリン酸リレー情報伝達系のマイクロアレイ解析 大腸菌ゲノムに存在する全てのHis-Aspリン酸リレー情報伝達系(2成分制御系:TCS)を網羅する欠失変異株を作製し、遺伝子発現パターンをマイクロレイ法にて解析した。結果はデータベースとして公開した(http//ecoli.aist-nara.ac.jp/xp_analysis/2_components/)。一方、レスポンスレギュレーターを高発現した場合のマイクロアレイデータも取得した。これらの結果を基に、機能未知のTCSにより制御される遺伝子群の同定と、TCSが感知するストレスシグナルの特定を行っている。マイクロアレイデータを解析した結果、RpoSレギュロン、鞭毛合成、鉄の取り込み、マルトースの取り込みなどの細胞機能が、複数のTCS欠失株において影響を受けることを見出した。この結果は、TCS間にクロストーク等を介した機能的相互作用が存在することを示唆した。現在、TCSを介した情報伝達ネットワークの全体像を明らかにすることを目指して、相互作用の実体に関して解析を進めている。 (2)分裂酵母のHis-Aspリン酸リレー情報伝達系の解析 分裂酵母のHis-Aspリン酸リレー情報伝達系遺伝子の破壊株を作製し、その解析からレスポンスレギュレーターPrr1が、減数分裂と酸化ストレス適応に関与することを見出した。この際、3つのヒスチジンキナーゼ(Phk1,2,3)が酸化ストレスセンサーとして機能し、Prr1に情報伝達している可能性を示唆した。また3つのヒスチジンキナーゼ(Phk1,2,3)は機能的に重複しつつ、Spy1(Hpt因子)、Mcs4(レスポンスレギュレーター)を介して細胞周期制御に関わることも示した。
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