研究概要 |
我々は、MATα2などいくつかの酵母転写因子にエピトープタグを結合したコンストラクト約30を作製し、これらの転写因子が細胞内で直接結合している標的配列を抗体を用いて濃縮し、DNAマイクロアレイで全ゲノム中の結合配列を同定してきた(ChIP on Chip法)。最近Leeらによって、酵母の約100の転写因子の標的配列をChIP on Chip法で同定したという報告があった(Science298,799(2002))。我々が解析中の転写因子のいくつかは、その中に含まれていたが、結果が異なっていた。CRZ1,PH04などの転写因子については、我々は既知標的遺伝子の近傍の結合解列の濃縮を確認できたが、Leeらの報告では確認できていない。この相違の原因を明かにするため、培養条件、免疫精製法の条件の検討などを行なった。Leeらはすべての転写因子の解析は、酵母の培養を同一条件でおこなっているが、我々の結果と相違の見られた転写因子の多くは、外部からのシグナルによってリン酸化などの修飾を受け、転写調節活性が変化するものであり、培養の条件によって検出される標的配列が大きく変化するということを明かにした。また、タグの位置や種類、架橋の有無によっても結果に違いの生じる転写因子が存在することも明かになった。これらの成果をふまえて、MATα2,MCM1など既に解析した転写因子に加え、MATα1,STE12などの転写因子の解析を行ないつつあり、酵母mating typeの決定に関わる転写ネットワークの解明を目指している。
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