研究概要 |
真核細胞のクロマチン構造の多様性を規定する主な要因であるコアヒストンのアセチル化はヒストンアセチル化酵素(HAT)及び脱アセチル化酵素(HDAC)によって触媒される。本研究はクロマチンの構造変化に基づくゲノム機能発現の制御機構を明らかにすることを目的とする。具体的には、ジーン・ノックアウト法を用い、HAT, HDAC及びクロマチンアセンブリーファクター(CAF-1)の欠損DT40変異株、特に細胞増殖に必須な蛋白質群(CAF-1p48,p60,p150など)に関しては、tet-off systemを作成し解析して、細胞特異的な遺伝子群や細胞増殖に必須な遺伝子群の発現制御に係わるこれら核蛋白質の機能を網羅的に解析する。本年度に得られた研究実績は次の通りである。 1、作成したΔHDAC-2変異株において、IgM H-chain, L-chain遺伝子の転写量は減少し、H-chain遺伝子近傍のクロマチン構造の弛緩を明らかにした。 2、OBF-1がOct-1に結合して、IgM L-chain遺伝子の転写を活性化し、この転写の活性化はHDAC-2で抑制されることを明らかにした。 3、GCN5は細胞周期関連遺伝子(p107,E2F-4,cyclinD2,D3,G1,c-myc, PCNAなど)及びアポトーシス関連遺伝子(bcl-xL, bcl-2)などの発現制御を介して細胞周期の制御に関与していることを明らかにした。 4、CAF-1p48,p60,p150はいずれも細胞の生存に必須であった。これらのtet-responsive homozygous mutantは新生DNA鎖上のヌクレオソーム形成能低下や様々な染色体異常、セントロメア構築の変化、クロモソームの過凝縮あるいは脱落などを伴って、死滅することを明らかにした。
|