研究概要 |
本研究は、ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803を用いて低温などのストレスへの適応過程を、野生株と環境ストレスセンサーの変異株で比較し、センサー分子の機能を解明することを目的としている。本年度においては以下のような進展がみられた。 1.塩ストレスセンサーの同定 ヒスチジンキナーゼのノックアウト・ライブラリーのDNAマイクロアレイによるスクリーニングにより、4種のヒスチジンキナーゼ(Hik33,Hik34,Hik16)が塩ストレスによる遺伝子発現の誘導に関わっていることを明らかにした。 2.マルチ・チャンネル・センサーの機能発現機構の解析 これまでの遺伝子破壊株とDNAマイクロアレイを用いた解析により、Hik33は低温、浸透圧、塩、酸化ストレス、強光など異なるストレスに応答し、異なった種々の遺伝子群の発現を制御するマルチ・チャンネル・センサーであることが示された。センサータンパク質と相互作用する因子の破壊株、過剰発現株を作製し、その影響を解析している。 3.レスポンス・レギュレーターのノックアウト・ライブラリーの作製 の40個のレスポンスレギュレーターの破壊株を作製した。既知の低温センサー、塩ストレスセンサーの下位で機能するレスポンス・レギュレーターを同定した。 4.低温誘導性タンパク質群の網羅的解析 プロテオーム解析によりSynechocystisのタンパク質の2-Dゲル・マップを作製した。低温誘導性タンパク質群の解析をICAT法により行っている。
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