研究概要 |
高等真核生物の遺伝子は核内のreplication factoryと呼ばれる構造体に於いて複製される。しかし,巨大で複雑なゲノム構造を反映させながら核内の複製を検出する実験系は確立されておらず,複製研究の大きな障害となってきた。そこで、新規複製関連因子,特に核骨格とのリンクに関わる因子をDNAポリメラーゼ結合因子として探索し,replication factoryに関わる蛋自質の同定と性質解析,及びin situでの再構築を目指した。DNAポリメラーゼα、ε、ORC, MCM, Cdc45を含めた20種類以上の複製因子間の相互作用を酵母two-hybrid法を用いて検討した。ヒトMcm10及びマウスCdt1がORC, MCM4, MCM6, DNAポリメラーゼα等と相互作用する事を見出し、Mcm10、Cdt1を中心とした複製因子間の分子ネットワークを高等真核生物において始めて示唆する結果を得た。また、構築した様々なbaitを用いてマウス初期胚由来のcDNAライブラリーの検索を行った結果、機能未知因子に加え、多数の因子がポリメラーゼ、もしくは複製開始因子に結合するタンパク質として単離された。さらに、ヒストンデアセチラーゼ複合体の構成因子SAP18をDNAポリメラーゼεに結合する因子として同定した。SIN3-SAP18複合体がS期において複製装置複合体と巨大な複合体を形成する事も見出し、DNAポリメラーゼを含む複製装置複合体とヒストンデアセチラーゼ複合体との相互作用を示唆する興味深い知見となった。一方、マウスCdt1の機能解析の結果Cdt1のN末293アミノ酸が配列、構造に非特異的なDNA結合活性を有する事、その活性がgemininによって阻害されることを見出した。複製前複合体の分子構築の理解をうえで重要な知見となった。
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