研究概要 |
本研究では遺伝子解析にVR技術を適用し,「遺伝子機能情報をVR環境内で可視化する手法の研究」,「DNAチップによる測定情報の空間内提示及びシミュレータによるモデル評価手法の研究」を大きな2本柱とした.前者について以下の1),2),次いで後者について3)の研究を実施した. 1)DNAチップによる測定情報を利用し,創薬に関連する遺伝子の絞り込み作業を行うVR環境を構築した.以下のものに関する解析作業空間構築指針を導出した:インタラクティブな可視化,広視野角の活用,身体感覚を活かした操作,作業に応じた空間構成.この指針に基づいてシステムを構築することで効果的な情報提示が可能となることを確認した. 2)DNAチップによる測定情報と染色体上の遺伝子の位置情報(locus)を統合し,染色体上での遺伝子発現異常を検出するExpression Imbalance Map(EIM)を開発した.サンプル間での遺伝子発現異常を統計的に定義し,染色体上で発現異常を確率論的に評価・可視化する手法である.従来の手法であるCGH法とEIMの整合性確認も行った.本手法は非常に解像度が高く(1遺伝子単位),CGH法などでは不可能な遺伝子レベルでの染色体のコピー数の増加などの発見が可能となった. 3)3次元空間内でPathway情報の可視化を行いタンパク質の細胞内局在情報を反映させる手法を提案した.この手法上にDNAチップによる測定情報を表示し,処理中の遺伝子をPathway上での関係性を確認しつつ理解することが可能となった.またシミュレーション結果の表示により,多数の要素に対する時間変化の関係性把握が容易となり,従来のグラフでは表現が難しい系全体のシステムとしての理解に有効であった. 現在,上記の知見を統合した環境としてVEGAS(Virtual Environment for Genome Analysis and Simulation)を開発している.
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