瞬目反射条件付けはマウスからヒトまで種を越えて共通に見られる古典的条件付けの一つであり、条件刺激として「音」を、無条件刺激として「まぶたへの侵害刺激」を用いて両者を組み合わせて繰り返し提示した場合、音だけでまぶたを閉じる条件反応が引き起こされる行動学的現象である。瞬目反射条件付けでは、単に音刺激と目を閉じるという行動が結びつけられて学習されるだけではなく、音が聞こえてからどの程度時間が経過してから目を閉じるかという時間を含めた形で記憶が形成される。本研究では、瞬目反射条件付けに伴う小脳皮質活動を可視化することで、条件付けが小脳皮質のどこで、どのように獲得され、保持されるかを明らかにすることを目的とし、本年度は以下の成果を得た。蛍光Ca^<2+>指示タンパク質であるcameleonを神経細胞特異的プロモーターによって発現するトランスジェニックマウスを作成し、単離小脳において表面よりcameleonによる蛍光シグナルが観察可能であることを明らかにした。また、85dB、1kHzの音を条件刺激、まぶたへ埋め込んだ電極による電気刺激を無条件反応として用いる、マウス瞬目反射条件付けの実験技法の修得を行った。さらに、瞬目反射条件付け遂行中のマウスの小脳皮質表面から神経細胞の活動によって生じる蛍光シグナルの観察を可能とすることを目的に、瞬目反射条件付けのための動物固定装置と高感度CCDカメラを用いた光学測定装置を組み合わせた実験装置を新たに構築した。
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