研究概要 |
代謝型グルタミン酸受容体mGluR1には長い細胞内C末端を持つmGluR1aやそれを欠いたb, c等スプライシングの違いにより、複数のサブタイプがある。また、mGluR1欠損マウスで見れらた小脳プルキンエ細胞に対する登上線維の多重支配、小脳長期抑圧の欠損、運動失調等がプルキンエ細胞特異的にmGluR1aを発現するマウスでは全て正常に戻ることが明らかとなった。本研究では、mGluR1aが持つ長い細胞内C末端ドメインを欠くmGluR1bを用い、mGluR1欠損マウスのレスキュー実験を行った。L7プロモーター下にmGluR1bcDNAを発現させるベクターをC57BL/6に戻し交配したmGluR1(+/-)受精卵にマイクロインジェクトし、L7-mGluR1bTg/mGluR1(+/-)マウスを独立に5系統作成した。現在、これらのマウスをmGluR1(+/-)マウスと交配し、4系統でL7-mGluR1bTg/mGluR1(-/-)マウスが得られ、1系統では運動失調が見かけ上なくなった。すなわち、mGluR1aの長い細胞内C末端と相互作用するHomer/Vesl等のシナプス後部に存在するadaptor蛋白質やscaffold蛋白質はプルキンエ細胞でのmGluR1依存的なシグナル伝達には必須ではないことが示唆された。一方で、mGluR1の下流分子、Gq、PLCβ4、PKCの久損マウスおよび阻害剤を用いた実験等から、プルキンエ細胞での長期抑圧、平行線維-プルキンエ細胞シナプスの除去、運動協調等にこれらの分子が必要であることが示されていることを考え合わすと、小脳プルキンエ細胞でのmGluR1依存的な機能にはmGluR1a,1bが共に活性化するGq-PLCβ-PKC経路が必要かつ十分であることが示唆される。
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