研究概要 |
Resurgent電流の成立機構を明らかにする目的で、Nav1.6遺伝子のスプライス変異型を探索したところ、二種の新規のスプライス変異を同定した。これらはドメイン1のみからなるタンパク(Delta2,Delta5)をコードした。以前報告されているドメイン1と2からなるスプライス変異(Delta4)ともあわせて全長型、不完全長型3種、に関してRT-PCR法により、RNAの発現時期を調べたところ、Delta4が全長型の増加に伴い消失するのに対して、Delta2とDelta5は生後数週齢まで残存していた。これらスプライス変異型分子の機能的な意味を探るため、アフリカツメガエル卵母細胞への発現実験を行なった。Delta2,4,5の単独ではいずれも電流を形成することはなかった。また、全長型Nav1.6との共発現で、電流量、キネティクスに有為な差はなく、Resurgent電流の出現も確認できなかった。3つの不完全長型分子がドメイン1と2の間の細胞内ループを有しておりこの部位がPKAのリン酸化を介したチャネル発現の促進現象に関わることから、全長型のPKAによる発現促通現象を抑制する可能性が考えられたので、PKAカクテルおよびbeta-adrenergic receptorの刺激による発現促通現象を定量したものの、これについても不完全長型サブユニットによる有為な効果は認められなかった。従って、Delta2,4,5の機能的な意義は、それらのタンパク発現にもとづくものは考えにくく、むしろ不完全な転写抑制によりもれ出るチャネルmRNAからの発現を抑制するためのメカニズムと考えられる。
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