研究概要 |
屋外空間において,主観的体験を記録する方式として,ウェアラブルコンピュータの使用を検討した.本研究では,空間情報を記録するための方法論として,周辺視野の重要性と空間認知の特長を実験により明らかにし,その実験から得られた結果をふまえた,主観的体験記録装置のプロトタイプの作成を行った.具体的には以下の項目について,研究を行った. ・空間認知特性の検討実験 ・周辺視野情報の依存性の実験 ・ウェアラブルコンピュータのプロトタイプシステムの作成 空間認知特性の検討実験では,視線追跡カメラシステムを用い,空間の見回し時と読書課題の2種類のタスクを被験者に試行してもらい,それぞれの眼球運動の違いを検討した.空間見回しの場合,水平方向に多く眼球運動が検出され,また画角に収まらない場合が多く検出された.周辺視野情報依存性の実験では,視野制限マスクを使用し屋外歩行時の周辺視野情報の依存性を,視野を制限することで歩行時間や頭部の動きがどのように変化するか,得られたデータより検討した.実験から,周辺視野を120度前後にすると自然の状態とほぼ同程度のパフォーマンスが得られることが考察できた.そこで,屋外歩行時の体験記録のプロトタイプとして,画角約110度の視野が記録できるシステムを作成した.この記録システムでは,記録画像を後に状況記録として見ることを目的とするので,人が再認するに十分な解像度を持つことができるよう,プログレッシブCCDスキャンカメラを3台胸部に配列したシステムとし,1つの記録システムに画像を記録している.頭部と胸部のヨー角,ピッチ角を同時に記録し,胸部を中心としたパノラマ画像の中で実際の頭部の方向を画像上にプロットすることで,視線の方向とその周辺視野を明確にし,その記録パフォーマンスを確認できるようにした.
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