研究概要 |
近年,見まねによるヒューマノイドの行動獲得手法に関する研究が注目されている.しかしながら従来研究では,行動の時系列データを単純に座標変換するだけであったり,教示者からの見本行動が失われると行動が生成できないものが多く存在した.この問題への対処として,本研究ではサルやヒトの脳において発見されたミラーニューロンの働きに注目する.ミラーニューロンは他者の行動の理解と自己の行動の生成の双方において発火するニューロン群であり,言語野と非常に近い部位に存在していることから,行動の模倣とシンボル生成との間を強く結び付ける器官であり,この存在がヒトの高次知能の元となるシンボル操作能力を生み出したとする仮説が注目されている.本研究では隠れマルコフモデルと力学的情報処理系を用いてミラーニューロンを工学的にモデル化し,言語発達の問題と行動発達の問題を統一的な工学モデルで実現することを目的としている. 隠れマルコフモデルを用いるアプローチでは,連続型隠れマルコフモデルによって,行動の表現に使用される基本的な行動要素と,シンボル操作を実現するための基本要素となる原始シンボルの双方を同時に獲得する手法を提案し,ヒューマノイドロボットにおいてその有効性を確認した. また,力学的情報処理系のアプローチでは,シンボルの概念を力学系のアトラクタとして実装する設計論を展開し,それをベースとして複数の力学系アトラクタ間を遷移する上位の力学系の設計法を提案した.この階層的な力学系を用いることによって,内部状態であるシンボルを力学的に遷移することによるヒューマノイドロボットの行動生成を実現した.
|