研究課題/領域番号 |
14019090
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
古山 宣洋 国立情報学研究所, 情報学基礎研究系, 助教授 (20333544)
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研究分担者 |
高瀬 弘樹 信州大学, 人文学部, 助手 (60345725)
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研究期間 (年度) |
2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2002年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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キーワード | 発話 / 身振り / 呼吸 / 協調 / 認知科学 |
研究概要 |
本研究は、発話と身振りの個人内・個人間における協調を可能にする機構を生態力学という観点から明らかにすること、特に発声の下位系である呼吸運動に着目して発話と身振りの協調を生態力学的に制約する情報を特定することを目的に実施され、現在尚進行中である。人は発話する際しばしば発話内容と意味的に関連する身振りをする。発話と身振りの共起に関する説明は、伝統的には、命令系である脳で両者の共起関係・意味的関連を全て特定するプランを作成し、それを実行系である運動器官で実行するとするものが主流である。ところが、最近の研究では空間的な情報を教示する場面等で教示者-学習者間でも発話と身振りの意味的に関連する部分が共起することが報告されており、全てが機械的に繋がった命令系-実行系を前提とする理論では十分ではなく、個人間に存在する情報を介して成立する協調系に関するデータの蓄積と理論化が必要であると考えられる。このようなことを背景に、本研究では、伝統的な理論の代替案として、運動の制御が当該の運動に直接的・間接的に関与する下位の系間の結合と競合の結果として自己組織的に創発する協調によるのであり、身体運動間の協調はこのような生態力学的に自己組織化する系と意図的な制御との緊張関係の中で成立するとする生態力学の観点から、特に発話-身振りの協調において発話の下位系である呼吸運動に着眼して実験・観察データを蓄積しつつある。本年度は、手首の伸展・屈曲運動と/a/という音声の発声運動を、屈曲時に発声し、伸展時に発声しないモードA、屈曲時に発声せず、伸展時に発声するモードBという2つのモードで、段階的に周波数が高くなるように設定されたメトロノーム音と同期させるように被験者に求める個人内協調に関する実験を行い、発話と手首運動の協調パターンが質的に転換する際に、呼吸運動のパターンにも変化が起こっていることを示唆する結果が得られた。この他、個人間における発話と身振りの協調についての予備的な実験を実施したり、自然会話場面で同様の現象が観察されるかどうかを確かめるためのデータを集録し、得られたデータの解析を現在進めている。今後もこのような研究を続けることで、発話-身振り協調系の総合的な記述と理論化を更に進め、コミュニケーションにおける人間の情報処理の理解、並びに情報学の深化に貢献していきたいと考えている。
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