| 研究概要 |
小腸粘膜上皮の機能的単位である絨毛・陰窩軸(villus-crypt axis)を構成する上皮細胞における自然免疫機構の分子基盤と機能を解明するために,われわれがex vivo細菌感染により内因性抗菌ペプチドを含む顆粒を分泌することを明らかにした小腸パネート細胞(Paneth cell)における病原体認識機構であるToll様受容体(TLR)およびその関連遺伝子の発現を解析した。
インフォームド・コンセントの下に,正常ヒト小腸粘膜からわれわれの既報により単離小腸陰窩および,さらに単離小腸陰窩から単離細胞分画を得た。単一の小腸陰窩レベルおよび単一の小腸粘膜上皮細胞レベルでTLR遺伝子および関連遺伝子の発現を,nest PCR法を併用したRT-PCR法で検討した。位相差顕微鏡観察下で,コントラストの強い粗大な分泌顆粒に富む単離パネート細胞は他の細胞群と容易に判別可能であった。単離小腸陰窩において,TLRおよびコレセプターmRNAの発現を認めた。さらに,単離パネート細胞での検討を行い,同様の結果を得た。次に,共焦点レーザー顕微鏡を用いて,単離小腸陰窩および単離細胞におけるTLRの免疫局在を検討した。TLRは陰窩の最基底部のみに局在が認められた。パネート細胞特異的マーカーであるalpha-defensin (HD5)との免疫二重染色により,TLRのパネート細胞における発現が示唆された。また,パネート細胞における局在を検討した。さらに,われわれの確立したex vivo細菌曝露によるヒト小腸パネート細胞分泌系を用いてdefensin-sensitive S. typhimuriumに対する抗菌活性アッセイを行い,パネート細胞上のTLRの機能を解析した。それらの結果,TLRがS. typhimurium刺激によるパネート細胞からのalpha-defensin分泌に関与する可能性を示した。本研究により,ヒトにおける消化管粘膜上皮細胞と微生物の直接的相互作用を明らかにした。
|
