研究概要 |
C型肝炎は世界の人口の約3%にあたる1億7千人もの人々に感染するウイルス性の病気であリ、肝臓における主たる病気となっている。C型肝炎ウイルス(HCV)の存在は以前より知られているが、その感染や発症のメカニズムついてはよく理解されていない。PileriらはHCVのエンベロープ蛋白質(E2)がヒトの細胞表面抗原レセプターであるCD81分子の細胞外ドメイン(LEL)に結合することを見出した。CD81分子は236個のアミノ酸からなる4回膜貫通型の膜蛋白質であり、2つの細胞外領域(LEL ; Large Extracellular LooP,およびSEL ; Small Extracellular Loop)と3つの細胞内ドメインおよび4つの膜貫通疎水性領域から形成されている。CD81のLEL/SEL複合体結晶については、SELの共存下でLELの結晶化スクリーニングの信果、MPDを沈殿剤とした場合に、以前得られた2種類のLEL結晶とは全く晶系の異なる結晶が得られた。これを用いてSpring-8にて2.0Å分解能のX線回折データを収集した。この結晶は、晶系がRhombohedralに属し、a=b=61.4,c=144.2Åであり、2.0Å分解能までのデータで、Rsymが6.2%,Completenessが99.5%であった。この強度データを基に、LEL部分のモデル座標を用いて分子置換法により、立体構造決定を行った。その結果、SEL部分であると考えられる30残基のアミノ酸に相当する電子密度がはっきりと得られており、現在、この電子密度部分に対してモデルビルディングを行っている。 CD81-LELは5つのα-ヘリックス(A-E)からなり、2量体の形成に関与するStalkサブドメイン(A,B,Eヘリックス)とHCVの結合に関与するHeadサブドメイン(C,D)からなる。SEL部分と考えられる電子密度部分は、C,Dヘリックスに対して垂直な位置に存在してLELと相互作用し、またE-ヘリックスの一部とも相互作用していた。この際、HCVの結合に必須であるPhe186残基は、SELとは結合せず溶媒側に突出して存在し、結晶内で他の対称な分子とパッキングしていた。従って、SEL/LEL複合体の立体構造からも、このPhe186残暮のHCVに結合する重要な部位であると考察できる。
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