研究概要 |
1)VacAによる空胞形成作用についての解析:VacAによる空胞形成に関わるSNARE蛋白の同定を目的として免疫組織化学によりスクリーニングしたところ、SNARE蛋白の一つであるSyntaxin 7が空胞上に存在することが分かった。このSyntaxin 7は正常細胞においてはlate endosomeとlysosomeの融合に働いていると考えられているので、このVacAによる空胞がその二者の病的融合で形成されるとの仮説と合致する。ヒトsyntaxin 7遺伝子をクローニングし、GFP-tagged wild-type Syntaxin 7を培養胃上皮細胞に強制発現させてVacA曝露によるその細胞内局在の変化を観察したところ、非曝露細胞ではGFP-tagged wild-type Syntaxin 7はその生理的局在位置であるライソゾームおよび後期エンドソームに存在したが、VacA曝露後に形成された空胞上へとGFP-tagged wild-type Syntaxin 7の局在は変化した。更に、dominant-negative type Syntaxin 7を強制発現させた培養胃上皮細胞ではVacAによる空胞形成が著明に抑制された。しかし、dominant-negative type Syntaxin 7の強制発現はVacAの細胞内への浸潤には影響を与えなかったので、dominant-negative type Syntaxin 7によるVacA空胞形成の抑制はVacAの細胞内への移行を阻害することに起因するのではなく、dominant-negative type Syntaxin 7が直接的に空胞形成を阻害した結果と考えられ、VacAによる空胞形成にはSyntaxin 7が関与していることが明らかとなった。 2)VacAによる細胞致死作用についての解析:VacAを胃由来株化細胞に作用させるとMAPキナーゼのうちp38、Erk1/2のリン酸化の亢進が認められたが、JNKのリン酸化亢進は認められなかった。p38のリン酸化はkinase活性化を引き起こし、その活性はSB203580で阻害ざれたが、VacAによるチトクロームCの遊離はSB203580では阻害しなかった。VacAによるチトクロームCの遊離とErk1/2の活性化との関連について研究を進めている。 3)VacAのマスト細胞への作用と血清成分による空胞活性阻害:VacAはマスト細胞に作用しTNFα,MIP-1α,IL-1β,IL6,IL-10,IL-13などの産生を促す。また、FCSにはVacAの受容体結合を阻止して、空胞化活性を抑制する糖蛋白質が存在することを見出した。
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