研究概要 |
マンノース結合レクチン(MBL)やフィコリンは自然免疫において重要な働きをしていることから生体防御レクチンと呼ばれている。ヒト血清中のMBLやフィコリン(L-ficolin/P35と博多抗原)には補体成分のC1r, C1s様構造を持つセリンプロテーゼMASP(MASP-1,MASP-2,MASP-3)と低分子量蛋白sMAPが結合している。MASP-3はMASP-1遺伝子の、またsMAPはMASP-2遺伝子のスプライシングバリアントである。MBLやフィコリンが一旦細菌等の糖鎖へ結合すると、MASPによりC2,C3,C4が分解され、補体レクチン経路が活性化される。レクチン経路は生体防御や、一方で病態とも関係していると推定されるがその詳細は不明である。そこで、本研究ではMASP-1/-3や、MASP-2/sMAPのノックアウトマウスを用いてレクチン経路の生体内での意義を明らかにする。また、マウスのレクチン経路を解析することにより、未だ不明な活性化機構の全体像の解明を目指す。次の成果が得られた。 (1)ジーンターゲッティーング法により作製したMASP-1,MASP-3ホモ型欠損マウス(以下、Masp-1/3(-/-))の血清から部分精製したMBL-MASP複合体にはMASP-2とsMAPが含まれているが、Masp-1/3(-/-)血清をマンナンと反応させると、MASP-2の活性化がMasp-1/3(+/+)血清に比べて低下していることがわかった。この系において、Masp-1/3(-/-)血清にヒトMASP-1/3を添加すると、Masp-1/3(+/+)血清による活性化のレベルまで回復した。また、Masp-1/3(-/-)においてMBL-A, MBL-C共にMasp-1/3(+/+)に比べて低値を示した。(2)マウス血清よりN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)-アガロース等を用いてficolin-Aを部分精製した。MonoQ上、ficolin-A画分に一致してMASP-1,MASP-2とsMAPが含まれていた。ficolin-AとMASPs/sMAPとの結合はカルシウムイオン依存性であり、複合体はGlcNAcに結合するとC4を活性化したことから、マウスのficolin-Aもヒトのficollinと同様にMASPとの複合体としてレクチン経路を活性化することが明らかになった。
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