研究概要 |
TatによるCIITAの抑制:Tatは、転写伸長促進作用に際しCDK7とともにP-TEFbを要求する。Tatが同じくP-TEFbを要求するCIITAよりP-TEFbを競合奪取してCIITA活性を抑制し、class II MHCの転写を抑え、抗原提示細胞機能を抑制して免疫不全状態の進行を促進することを見いだしたが、今年度は、CIITAの誘導因子であるIFN-γが逆にTat作用を抑え、その結果HIVの増殖を抑制することを見出し、HIV感染に伴う免役不全病態の進行が可逆的に制御可能であることを示した。 NF-κB活性化シグナル:PKAによるリン酸化カスケードがC/EBPβを誘導し、p65サブユニットと結合することによりその活性を抑制することを明らかにした。また、リンフォトキシンによるNF-κB活性化シグナル伝達系にNIKとIKKαが必須であることを初めて明らかにした。 NF-κBのp65サブユニット相互作用因子の包括的遺伝子スクリーニング:すでに、酵母two-hybrid法によりNF-κBの転写活性調節に関わる複数の核内因子(RAI,AESとTLE1,TLS、など)を同定した。このうち、今年度はRelA-associated inhibitor(RAI)は核内でp65のみならずSp1に対しても強く抑制し、HIV転写活性とウイルス複製を抑制することを明らかにした。新たな相互作用因子スクリーニングシステムCytoTrap法を適用し、ユビキチンE2リガーゼ活性を持つと報告されている蛋白AO7をNF-κB活性化因子として同定した。AO7は核内に存在し、p65と相互作用してむしろ転写活性化を促進する。最近、転写活性化反応過程にユビキチン化が正に関与することが提唱されているが、転写レベルでのHIV活性化の分子標的として注目される。
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