研究課題/領域番号 |
14021120
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
久保 允人 東京理科大学, 生命科学研究所, 助教授 (40277281)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
2002年度: 5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
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キーワード | サイトカインシグナル / T細胞機能分化 / Th1 / Th2 / IL-4 / STAT6 |
研究概要 |
Suppressor of Cytokine Signaling-1(SOCS-1)/Jak binding protein(JAB)/STAT-induced STAT inhibitors-1 (SSI-1)は、サイトカインシグナルを抑制的に制御する分子として同定され、その構造の類似性からいくつかのファミリー分子が見つけられている。これらファミリー分子のうちSOCS3とSOCS5はT細胞機能分化課程においてそれぞれ異なる発現パターンを示している。SOCS5はTh1特異的に発現しておりIL-4依存的に誘導されるSTAT6の活性化を抑制することによりTh2分化を抑制していた。これに対し、SOCS3はTh2特異的に発現しており、IL-12依存的に誘導されるSTAT4の活性化を抑制し、Th1分化を抑制していた。そのSOCS5及びSOCS3を発現するトランスジェニックマウスでは、Th2及びTh1への分化が抑制され、その結果としてTh1及びTh2分化が亢進されていた。SOCS3の働きについてT細胞特異的に発現させたTgマウスのT細胞の機能分化は、Th1分化が顕著に抑制され、それに呼応してTh2分化が促進していた。CD4+T細胞におけるSOCS3の発現はIL-4依存的に制御されており、そのためその発現はTh2細胞特異的に認められた。マウスの系においてSOCS3の発現がTh2特異的に見られること、Th2がアレルギー炎症と深い関連があることから、ヒトにおけるアレルギー疾患とSOCS3の発現との関係を検討した。その結果、SOCS3の発現は喘息およびアトピー性皮膚炎患者において顕著に高いことが明らかにされ、アレルギー炎症におけるSOCS3分子の重要性が示唆された。そこで、SOCS3Tgマウスにおけるアレルギー反応を解析するため、抗原によって誘導した喘息モデルを検討した。SOCS3Tgマウスにおける喘息症状は顕著に亢進していたことから、SOCS3分子の発現上昇がアレルギー炎症の増悪に関与していることが分かってきた。更に、同様の系をサイトカイン抑制活性を消失させた変異体SOCS3を発現するTgマウスにおいて検討したところ、喘息症状は顕著に改善されたいたことから、SOCS3によるIL-12レセプターシグナルに対する抑制制御がT細胞機能分化におけるサイトカインネットワークバランスに変化を与えることにより、アレルギー炎症の増悪を引き起こしておると考えられた。 以上の結果より、SOCS5及びSOCS3はヘルパーT細胞の初期分化過程に存在するサイトカインによって特異的に発現が誘導され、それぞれが異なるサイトカインシグナルを抑制する事により、T細胞機能分化におけるサイトカインネットワークバランスに変化を与え、生体で起こる免疫反応を制御している事が明らかにされた。
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