研究概要 |
1)事例外挿法による相対運動の教材開発:事例外挿法とは,基本的な科学的概念の学習を終えた状態の学習者に対し,「より正確で間違いのない」概念形成をねらう(科学の世界への「内挿」)のではなく,「科学的意味の使用が適切であるときの鋭い評価力」を持った事例,具体的には,生活の中の様々な技術的問題の解決場面において,科学的概念が持つパワーが発揮されている事例を与え,学習した概念がどのように使われているのかを考える(テクノロジーの世界への「外挿」)ことにより,柔軟で生き生きとした科学的概念の形成を促進することをねらった教材の開発方法である。この手法により,中学生および高校生を対象にした事例外挿法による相対運動の学習コンテンツを開発した。外挿事例としては,(1)移動する列車から落下する鉄球の動きを予測する基本的ルールの習得を行う「電車サブコンテンツ」,(2)比較的容易な外挿を行う「気象衛星サブコンテンツ」,(3)比較的高度な外挿を行う「VTRヘリカルスキャンサブコンテンツ」からなる。3つのサブコンテンツはWeb経由でインタラクティブに実験条件の設定が可能であり,各条件に合致する動画がサーバーよりストリーミング技術によって配信されるようになっている。 2)評価:公立中学校1・2年生21名,現職教員を含む大学院生17名を対象に,事例外挿法による教材の効果を検証した。すると,(1)相対運動のルールの理解は,学習後に向上していた,(2)各コンテンツは,予測通り機能しており,特に「多少理解に困難な伴うコンテンツほど面白さが向上する」という効果を検証することができた。
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