研究概要 |
研究1では,(1)数学学習コンテンツ6領域の間で、日常的有効性認知(日常的に有効であるとする認知)に違いがあるのかどうか、(2)数学学力と日常的有効性認知及び有効場面の産出数との関連性について検討し,有効性の認知は学習領域によって異なり、「計算」及び「表とグラフ」は、他領域よりも有効性が高いと認知されている(図2)。学力低位群は、「論証」の有効性を最も低く認知しており、加えて同群は「論証」の有効場面の産出も困難であることが明らかにした。 研究2では、数学的思考から一般的思考への転移可能性をより精緻に検討するために、数学学習内容の理解度の指標を知識構造とし、一般的思考を科学的思考に限定した形で、学習者の知識構造と科学的思考と関連性を検討し,数学の学力が同程度であっても,数学的思考の知識構造が精緻な生徒の方が,科学的思考においても多様な視点を取りうることが明らかになった。 研究3では、思考力を形成する教授方略の抽出を試みるとともに、その教授方略と数学教師の数学学習内容の理解度との関連性を検討したが,数学学習内容の理解度と教授方略との関連性は明らかにできなかった。その原因は、学習単元の導入場面に即して授業プランを作成させたことにより、授業プランにおける教師の意図が知識定着に限定されてしまい、思考を導くような教授方略が抽出できなかったことにある。
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