研究課題/領域番号 |
14023226
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
人文・社会系
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研究機関 | くらしき作陽大学 |
研究代表者 |
北野 信彦 くらしき作陽大学, 食文化学部, 助教授 (90167370)
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研究分担者 |
高妻 洋成 独立行政法人文化財研究所, 奈良文化財研究所・埋蔵文化財センター, 主任研究官 (80234699)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2003年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2002年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 文献史料 / 文化十四年 / 仁孝天皇御道具揃 / 優品漆器 / 量産漆器 / 烏の濡羽色 / 劣化現象 / 野外暴露実験 / 木取り方法 / 木胎製作 / 一括出土の漆工用具類 / 混和剤 / 球状抜け穴 / チョーキング現象 / 亀甲断紋 / 近世漆器 |
研究概要 |
本年度は、(1)江戸時代の文献史料を用いた基本的な漆器生産技術の解明、(2)個々の出土漆器の分析、(3)以上の(1)および(2)の調査で解明された漆工技術を参考にした劣化実験用の漆塗膜手板(標準サンプル試料)の劣化実験、の3項目の調査を行った。(1)の項目では、これまでの調査で劣化が著しい近世漆器とは簡便が技法と廉価な材質からなる量産漆器であることが確認されているが、それと両極端に位置する優品漆器の代表である漆器の材質・技法を把握するため、全5冊から構成される『文化十四年(1819)仁孝帝即位御道具仕様帳』の文献史料の基礎調査を行った。この史料は、仁孝天皇が文化十四年に即位する際に揃えられた御道具の種類・寸法・数量・道具の製作に関する各種仕様が極めて詳細に記載されていたが、この中には天皇家の御紋である菊御紋を蒔絵加飾した漆器の材質・技法に関する記述も管見された。調査の結果、これらは、(a)サビ下地を数回施し布着せ補強を行う。(b)地の上塗り漆は、カーボン系の黒漆にやや透明感のある呂色漆を重ね塗りするいわゆる「烏の濡羽色」の深い黒色の地塗りを行う技法である。(c)蒔絵粉や梨子地粉材料はさまざまな粉形態の金・青金・銀粉を用いた。などが理解された。次に(2)の項目では、江戸時代後期頃に年代が比定される劣化の進行した出土漆断面の細部を顕微鏡観察した。調査の結果、3〜4マイクロメーター程度の微細な球状抜け穴痕跡と、空気抜け穴状のやや顕著な空洞痕跡が確認された。このうち微細な球状抜け穴痕跡は、生漆が固化膜を形成する際に発生する漆膜内部のゴム質不飽和分散形態、やや大きい抜け穴は油分などの各種混和剤の抜け穴であると考えられる。また、漆自体が劣化によりチョーキングを起こした膜面では劣化の著しい部分で使用顔料や蒔絵粉材料がむき出しの状態にある様子が極めて明確に観察された。(3)の項目の劣化実験については、黒色漆の手板サンプルを中心として野外暴露実験を行い、この経過観察は現時点においても継続中である。
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