研究概要 |
肝化学発癌剤に遺伝的に抵抗性DRHラットの抵抗性機構を明らかにすることが本研究の目的である。DRHと感受性F344ラットのF1に3'-Me-DABを投与し、8週後、肝部分切除をおこない、さらに20週間観察後、肝発癌、前癌病変ならびに癌組織の抵抗性座位のLOHを検索した。肝部分切除は前癌病変の検索と腫瘍促進の目的をかねておかなわれたものであるが、(1)肝部分切除をおこなったF1 ratsは行わなかったものに対し、有意に発癌率、癌発生数が高くF344ラットと同等であった。すなわち、DRHの半優性抵抗性はprogression段階での肝部分切除によりepigeneticに抑制されることが示された。(2)また発生した肝癌では抵抗性遺伝子座Drh1,Drh2についてLOHを検出しなかった。これらのことから、Drh1,Drh2はいわゆる癌抑制遺伝子として作用しているのではないことが示された。 DRH系はDABのみならず、AAF等構造の異なる発癌剤に対しても抵抗性を示す。N-nitrosomethylbenzylamineは肝で活性化され食道癌をおこす発癌剤であるがDRHはこれにも抵抗性を示した。しかし4NQO経口投与による舌癌には全く抵抗性をみとめなかった。このことから、DRHの遺伝的抵抗性には肝における発癌剤活性化が深く関わっているものと考えられた。 2つの抵抗性座位の個別の作用を明らかにするため両座位に対するcongenic ratを作成し現在戻し交配6代日である。完成すれば前癌病変、発癌についてそれぞれの関与を定量的に評価するIn vivo実験を実施する。
|