研究概要 |
リンパ球依存性の自己免疫性関節炎を自然発症する、サイトカイン受容体gp130のY759F変異ノックインマウス(gp130F759)の樹状細胞(DC)機能異常が自己免疫疾患発症と抗腫瘍免疫に及ぼす影響を分子レベルで明らかにすることを目的とした。 1.BMDCの成熟・機能におけるSTAT3の役割解析 LPS刺激によりBMDCに誘導されるクラスII MHC(MHCII),CD40,CD80,CD86の発現量増加は、gp130F759由来BMDCにおいては、IL-6により著明に抑制された。この抑制効果は、STAT3への情報伝達経路を欠くgp130FXXQマウス由来のBMDCでは観察されず、レトロウイルスベクターを用いてドミナントネガテイブSTAT3を遺伝子導入したgp130F759-BMDCで回避されたことからSTAT3を介していることが示された。 2.gp130F759BMDCにおけるToll-like receptorシグナルについてはIL-6存在下のLPS刺激によるJNKのチロシンリン酸化およびIkBの分解を解析したが差異を認めなかった。 3.免疫寛容、自己免疫応答および抗腫瘍免疫の関係。 gp130F759マウスでは外来抗原に対する免疫応答の遷延傾向が認められた。自己反応性T細胞の頻度解析により、gp130F759の抗原提示細胞は野生型リンパ節T細胞から自己反応性T細胞を誘導する能力が亢進しているがgp130F759のリンパ節T細胞からの誘導能は低下していることが明らかとなった。 4.DNAマイクロアレイ解析 gp130F759マウス由来のBMDCにおいてIL-6刺激の有無により発現量の変化した遺伝子140個(増加109,減少31)を検出した。 今後はgp130F759のDC機能異常が抗腫瘍免疫に及ぼす影響とIL-6により変動する遺伝子群との関連を解析してゆく。
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