研究概要 |
ヒト白血病では高頻度に特異的な染色体転座が見られ、その結果生じる融合遺伝子産物の発現や発現異常が白血病発症に関与すると考えられる。このなかでAML1遺伝子は、ヒト白血病において最も高頻度に染色体転座の標的となり、他の遺伝子と融合して異常な融合蛋白質を生じる。AML1の機能の解明を目的として、AML1複合体を精製することによりAML1と結合する因子を検索した。これまでにヒストンアセチル化酵素p300/CBP及びMOZがAML1複合体に含まれることを報告しているが、新たに前骨髄性白血病タンパク質PMLがこれに含まれることを明らかにした。PMLのアイソフームの中でPML IのみがAML 1bと結合し、この結合にはAML 1bのC末端領域とPML IのC末端領域が必要であることが示された。PML IはAML1に依存した転写と骨髄性細胞の分化を促進し、これらの活性にはPML IのSUMO-1化が必要であった。PMLはnuclear bodyと呼ばれる核内の斑点状の領域に局在することが知られているが、PML IはAML1とp300をこのnuclear bodyに共局在させることが明らかとなった。これらの結果から、PML IはAML1とその転写共役因子であるp300/CBPをnuclear bodyに集積させることにより複合体形成を促進し、AML1を介した転写を活性化して分化を誘導すると考えられる。これまでに同定されたAML1複合体因子PEBP2β,MOZ, p300/CBPに加え、PMLもヒト白血病における染色体転座により異常な融合タンパク質を生じることから、AML1複合体の機能異常が白血病発症の主要な原因であることが示唆された。
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