研究概要 |
鳥類におけるVEGFファミリーの一つであるRIGF(Retinoic acid-Induced Growth Factor)の血管網形成における機能を解析した。昨年度の研究として行ったin situ hybridization法によるRIGFの発現部位の詳細検討により、RIGFが胚発生期の血管網の形成、とくに四肢を栄養する動脈(鎖骨下動脈)の形成に機能を持つ可能性が見出されたので、本年度はこの点に特に注目して研究を行った。まず、前肢と後肢においてRIGFの機能差が存在するかどうかを調べるため、前肢と後肢の発生過程の違いを詳細に調べた(Saito et al.,2002)が、顕著な差は見出されなかった。また四肢形態形成に必須の分子であるレチノイン酸およびshhと、RIGFの関係についてin vivoにおける局所投与実験系を用いて調べ、RIGFがこれらの因子の下流に存在する機能分子である可能性を示した。さらに、四肢を栄養する血管網のパターン形成とRIGFの機能との関係を調べる目的で手足の形成における様々な分泌因子の寄与とくにFGFファミリーの機能を解析し、発生期の胚胎の血管網にさまざまな人為的形態変更を施した際のRIGFの発現変化を調べることにより、四肢の中心動脈(鎖骨下動脈)の形成にRIGFが関与している可能性を見出した(Tamura et al.,2003)。とくに本実験系を用いて、本来四肢の生える位置ではないわき腹の部分にFGFを局所投与することによって過剰な肢芽を作成し、そのときの血管の配行パターンとRIGFの異所的発現の発現部位との比較により、RIGFの発現部位に沿って中心動脈(鎖骨下動脈)が形成される事を明らかにした。今後はマウスFIGFの発現および機能とニワトリRIGFの機能との比較を行いながら研究を進める必要がある。
|