研究概要 |
BSACの標的配列を決定するために、種々のプロモーター配列を有するレポーターベクターを用いて検討した結果、BSACはCArG boxと呼ばれるA+Tに富む特異的なDNAの配列を認識して、強い転写活性化能を発揮していることが明らかとなった。また酵母の転写因子であるGAL4のDNA結合配列とBSACの種々の欠失変異体との融合タンパクを用い、GAL4依存性の転写活性化能を検討した実験より、BSACの転写活性化ドメインはC末側に存在するプロリンに富む185個のアミノ酸よりなる領域に存在することが明らかとなった。一方BSACの種々の欠損変異体をMyc-tagを付加して発現させ、その転写活性化能をCArG boxを有するプロモーターベクターを用いて検討したところ、GAL4融合タンパクとして発現させた場合とは異なり、N末より373個のアミノ酸を欠損させると、BSACの転写活性化能は完全に消失することが明らかとなった。このメカニズムを検討するために、欠損変異体の核内局在を検討した結果、全長のBSACは主に核に存在するのに対し、N末353個のアミノ酸の欠損変異体は主に細胞質内に存在していた。欠損させた領域には核移行シグナルと思われる塩基性のアミノ酸に富む領域が存在することから、このドメインがBSACの核内移行には必須であると考えられた。そこで、最後に種々のBSAC変異体をtraf2^<-/->traf5<-/->MEFに恒常的に発現させ、TNF誘導性細胞死に対する感受性を検討したところ、BSACのN末およびC末側の欠失変異体は,全長のBASCを導入した細胞株と異なり、TNF誘導性細胞死に対する抑制効果はほとんど認められないことが明らかとなった。これらの変異体は転写活性化能が消失していることを考慮すれば、BSACは何らかの細胞死抑制遺伝子の発現上昇を介して抗アポトーシス機能を発揮していると考えられた。BSACはt(1,22)転座により生じる白血病においてOTT/RBM15と呼ばれる遺伝子と融合することが明らかにされている。今後、OTT/RBM15の機能を明らかにし、OTT-BSAC融合遺伝子がどのようなメカニズムにより白血病をもたらすかを明らかにしていく予定である。
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