研究概要 |
cDNAアレイによる網羅的遺伝子発現情報の取得により,癌の病態把握・治療選択における多大の進歩がもたらされるであろうと期待されている.癌の個性に合わせた化学療法剤の選択によるテーラーメード医療の実現もその1つである.本研究では癌の抗癌剤感受性とトランスクリプトームとの関係を解析することを目的とする.具体的には多種の癌細胞株の変異データ,DNAアレイデータ,化学療法剤感受性データをニューラルネットワークなどのアルゴリズムにて解析し,化学療法感受性を決定する遺伝子変異および遺伝子発現パターンを明らかにして,抗癌剤感受性予測・修飾のためのターゲット分子を明らかにすることである. 研究成果 計120系の癌細胞株について化学療法剤感受性と関係の深いp53,PTEN,APC癌抑制遺伝子について完全に変異の有無とその変異内容を同定した.p53変異は120系中91系に,PTEN変異および発現消失は120系中18系に,APC変異および発現消失は120系中20系に認めた.さらに114系の細胞株につきDNAアレイ解析を施行,p53変異の有無を各種コンピュータアルゴリズムを使ってパターン識別できるかを検討した.その結果,特徴選択アルゴリズムをk-nearest neighbor法と組み合わせて,パターン識別に重要な遺伝子を数10種〜200種に絞り込み,それをニューラルネットワークの学習データセットとして用いるのが最適であることが判明した.この方法を薬剤感受性のトランスクリプトーム識別に応用する実験・解析を現在施行中である.
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