研究概要 |
Limitinは、IFN-alphaやIFN-betaと類似の構造を有しIFN-alpha/beta受容体と結合することより、新種のI型IFNと考えられている。抗ウイルス活性を基準にLimitinとIFN-alphaの量を調整し両者の生理活性を比較すると、LimitinとIFN-alphaはp210bcr/ablをstable transfectionした血液細胞株(FDCP-1や32D細胞株)の増殖を同程度抑制した。IFN-alphaで認められるコロニー形成抑制は、Limitinではより高濃度が必要(CFU-IL7,CFU-Meg)あるいは認められなかった(CFU-GM, BFU-E)。一方、IFN-alphaと比較して低濃度のLimitinでMHC class I発現を誘導した。このようにLimitinとIFN-alphaでは各作用発現に関し両者で異なった濃度依存性を示すことが明らかとなった。LimitinのBリンパ球前駆細胞増殖抑制作用には、Daxx分子の発現増強と細胞内分布変化が必須であり、そのDaxx分子の変化にはTyk2からのシグナルが重要であることを明らかにした。巨核球産生抑制作用にはTyk2,Stat1両方のシグナルが必須であり、Limitinの方がIFN-alphaと比較してこの増殖抑制作用が軽微であった。Limitinの抗ウイルス作用にはMx蛋白や2,5-OAS, PKRなどの抗ウイルス増幅蛋白の誘導が関わっており、Limitinの場合はこれらの蛋白誘導にIRF-1を介するシグナル伝達経路がIFN-alphaと比較してより重要であった。このように、LimitinとIFN-alphaのシグナルを各生理活性について比較し、両者のシグナルの相違を明らかにしつつある。また、免疫組織やRT-PCRでマウス生体内におけるLimitin産生細胞を解析し、主に成熟Tリンパ球がLimitinを産生しており特に胸腺でLimitin遺伝子発現が高いことを明らかにした。この結果から、ヒト胸腺由来ライブラリーがヒト型Limitin遺伝子をスクリーニングする際の有力な候補と考えられた。また、胸腺におけるLimitin遺伝子発現は健常時から認められ、他のIFNとは異なりウイルス感染による遺伝子発現増強は認められなかった。このことより、Limitinは、ウイルスの侵入に備えることや免疫状態を調節し腫瘍細胞など危険な細胞を排除することに対して恒常的に(健常時から)生体内で関与していると考えられた。
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