研究概要 |
栄養障害型表皮水痘症を臨床症状の重症度に応じて重症型,中等症型,軽症型に3分類し,皮膚におけるVII型コラーゲンの発現量評価と遺伝子解析を行った。その結果,臨床的に重症型では,蛍光抗体法でVII型コラーゲンの発現がなく,COL7A1遺伝子5'末端近くに双方のアレルにノンセンス変異や,フレームシフトをともなう挿入欠失であることがわかった。一方,軽症型では,VII型コラーゲンの発現はやや減少している程度で,遺伝子変異は,ミスセンス変異とノンセンス変異のコンパウンドヘテロ接合体あるいは,一方のアレルにのみのグリシンが他のアミノ酸に置換されるミスセンス変異が多かった。 さらに栄養障害型表皮水痘症で,早期に多数の扁平上皮癌を発症した症例群と少数に留まる群において,VII型コラーゲンの発現量評価と遺伝子解析を行った。扁平上皮癌多数発生群では,ノンセンス変異とコラゲナスドメインで繰り返されるグリシンが他のアミノ酸に置換されるミスセンス変異とのコンパウンドヘテロが多く,かつVII型コラーゲンの全配列の後半以降で生じた変異が多かった。VII型コラーゲンの発現量はやや減少している程度で,表皮水痘症自体の臨床症状は,むしろ中等症型であった。今回,皮膚潰瘍周辺組織で,VII型コラーゲンのNC1ドメインのなかのフィブロネクチン3ドメインのlinker部にアミノ酸が9個挿入されるalternative splicingがあることを示した。また,このalternative splicingは正常組織と比較して潰瘍組織で有意に増強することがあきらかとなり,創傷治癒に関連していることが示唆された。さらに,栄養障害型表皮水痘症の潰瘍部位からは多く扁平上皮癌を発症することが明らかにされており,栄養障害型表皮水痘症の扁平上皮癌発症に,変異型VII型コラーゲンの発現が関わっている可能性が示唆された。
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