研究概要 |
t(14;18)BCL2/IgH転座は,濾胞性リンパ腫(FL)に特徴的な転座である.本邦では悪性リンパ腫におけるFLの頻度(6.7%)は,欧米(30-40%)に比し極めて低い.また,FLにおけるBCL2/IgHの頻度(30-60%)も,欧米(80-90%)に比し低いとされてきた.後者は,本邦FLが欧米FLと本質的に異なることを示唆しており,治療戦略および研究の展開上,欧米のデータを外挿することが無意味である可能性を内包している. 平成13年度までに日本人FL37例のフォルマリン固定・パラフィン包埋検体を用いた間期核FISH法により,BCL2/IgHの頻度,免疫組織化学的マーカーとの関連,および組織学的gradingとの関連を検討した.37症例のFLのうち,FISHによる判定が可能であった症例は33例であった.BCL2/IgHは27/33例(82%)に検出された.FL, grade1-3Aに限った場合の検出率は25/29例(86%)であった.14年度中に10数例の症例追加をし現在解析中である. 東大病院において最近10年程度の間に診断されたDLBCLを組織学的に再確認し,FLと同様に組織学的,免疫組織化学的検討,間期核FISHによる,BCL2/IgHの検出を行う.14年度中の症例選定により症例は126例となった. 東大病院で最近10年程度のリンパ腫症例を,HCV陽性例と陰性例とに分け,リンパ腫患者に於けるHCV陽性率を算定した.平成14年中の解析により,377例の悪性リンパ腫患者でHCV抗体の有無が調べられていたことが判明した.そのうち31名がHCV抗体陽性であった(8.2%).
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