研究概要 |
水晶体では赤道面近くにある領域での局所的な増殖->停止->分化誘導->核崩壊の時系列での制御がその形成において極めて重要である。また水晶体の核崩壊はアポプトーシスと類似した機構の関与が提唱されているものの、水晶体の細胞は生涯にわたって核を伴わず機能し続けるので、どのような分子機構が核崩壊の過程に関与しているのか興味が持たれていた。αA-crystallinは水晶体の分化開始とともに発現する蛋白質である。本研究では我々が単離したゼブラフィッシュαA-crystallinプロモーターを用いてその制御下に様々な増殖、アポプトーシス関連機能遺伝子を発現させ、これによる水晶体の発生への影響を見てその分子機構を検討することを計画した。 αA-crystallinプロモーター部分約2,7kbを単離し、EGFPを発現させ水晶体の分化開始に伴って発現すること、網膜を含む他のどの臓器にも発現しないことを確認した。これまでにカスペース8,10、優勢劣勢変態FADD, FLIP, ICADなどをゼブラフィッシュ受精卵へのインジェクションにより発現させ、水晶体の形態観察に加えて核の状態をDAPI染色で、核のフラグメンテーションをin situTUNEL assayで、また細胞増殖をBrdU取り込みで観察した。その結果、水晶体の核崩壊にはFADD/caspase/CAD経路が関与している可能性があること、またその下流に断片化させた核をさらにヌクレオチドまで分解する酵素が機能している可能性があることが明らかになった。また一方で水晶体は腫瘍の観察されない臓器として知られている。実際、SV40largeT、βカテニンなどの遺伝子をこのプロモーター下で発現させても水晶体の腫瘍化は観察されなかった。
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