研究概要 |
1.正常の発生段階あるいは細胞分化においてp53ファミリーメンバーの機能を媒介し直接実行する標的遺伝子を決定するために,p53ファミリーをいくつかのヒト癌細胞株に導入し、cDNA microarrayによる発現解析を行った.その結果,p73の特異的標的遺伝子としてIL-4Rα遺伝子を同定した.さらにIL-4Rαゲノムにp73タンパクと細胞内で特異的に結合する部位を同定し,p73がこの配列に結合することによりコファクターがリクルートされ,ヒストンのアセチル化が促進されることを明らかにした.またp73が活性化した細胞をIL-4で刺激すると,STAT6の活性化とアポトーシスが誘導され,この効果はIL-4Rの中和抗体により抑制された.この結果はp73がIL-4シグナルを介して細胞の分化,炎症,アレルギーに関わっていることを示唆している. 2.p53ファミリー共通の標的遺伝子としてosteopontin(OPN)を同定した.OPNは主に活性化T細胞から分泌されるサイトカインで,骨組織の形成に不可欠だけでなく,B細胞の分化増殖や抗体産生能に重要な役割を果たしていることが示された.この結果はp53ファミリーの機能に関する新しい知見と考えられる. 3.p53ファミリーにおいて最も最も高親和性で結合するDNA配列には違いがあり,スペイサーが介在するp53結合モチーフ配列RRRCWWGYYYの3コピー以上で構成される配列が,p63あるいはp73の高親和性応答配列として働くことが示唆された.従ってp53ファミリーは結合配列に対する親和性の違いにより標的遺伝子の使い分けをしており,生体においては単純に機能が重複している遺伝子ファミリーではないことを明らかにした.
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