研究概要 |
1.細胞周期の制御機構におけるMsx1およびMsx2の機能解析 Msx1,Msx2は、何らかの因子Xの発現抑制することにより、Cyclin D1の発現を促進していることが予測された。このXを同定するために、Msx1,Msx2ダブルノックアウトマウスの第一鰓弓からRNAを取り、野生型のRNAを対象に用いて、differential display法によりダブルノックアウトマウスで発現が増加する遺伝子をスクリーニングした結果、約50クローンが得られた。 2.神経堤細胞の増殖・遊走・分化におけるMsx1およびMsx2の機能解析 神経堤細胞の増殖・分化に機能するMsx1,Msx2の標的遺伝子あるいは下流遺伝子の網羅的探索を行うために、神経堤細胞を特異的に標識するConnexin43-EGFPトランスジェニックマウスを作成した。 3.脊髄背側のパターン形成におけるMsx1およびMsx2の機能解析 Wnt1,Wnt3aの発現がダブルノックアウトマウス脊髄背側で著明に低下していることを発見した。BMPシグナルの標的遺伝子であるMsx1,Msx2は、BMP→Msx1,Msx2→Wnt1,Wnt3a→Math1,Ngn1,MATH1という経路あるいはWnt1,Wnt3aを介さない経路の2通りで脊髄背側におけるプロニューラル遺伝子MATH1,Ngn1,Mash1の発現パターンを制御していることが考えられた。 4.胸腹壁形成におけるMsx1およびMsx2の機能解析 Msx1,Msx2ダブルノックアウトマウスでは全例に胸腹壁の全欠損、Msx1+/-,Msx2-/-あるいはMsx1-/-,Msx2+/-マウスの約75%に腹壁の部分欠損が認められ、胸腹壁の形成には量依存性にMsx1,Msx2が機能することが明らかになった。転写因子AP-2のノックアウトマウスではMsx1,Msx2ダブルノックアウトマウスと同様な胸腹壁の全欠損をきたすので、ダブルノックアウトマウスにおけるAP-2遺伝子の発現を調べたが、異常は認められなかった。
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