研究概要 |
研究代表者は、発現クローニング法によって体軸形成の制御因子のスクリーニングをおこない、アフリカツメガエルのp53転写因子(xp53)を単離した。ツメガエル胚のアニマルキャップにおいてxp53を過剰発現させたところ、xp53は、中胚葉と内胚葉を誘導することが分かった。また、xp53によって誘導される遺伝子のうち、2つのホメオボックス遺伝子MixとXhox3がxp53の直接の標的遺伝子であることが分かった。中胚葉の誘導とパターニングはTGF-βファミリーによって制御されていることから、TGF-βファミリーに属するactivinおよびBMPのシグナルとxp53の相互作用を調べた。xp53アンチセンスモルフォリーノオリゴ(xp53-MO)の注入により、xp53の機能を阻害した胚のアニマルキャップでは、activinとBMPのシグナルに対する応答性が低下していた。ホメオボックス遺伝子Mixがxp53の直接の標的遺伝子であることから、転写制御領域の解析をおこなった。その結果、Mix.2遺伝子のゲノムDNA上にはactivinおよびBMP応答エレメントに加えてp53結合サイトが存在し、これがactivinとBMPシグナルによるMix.2遺伝子の発現誘導に必要であることが分かった。また、xp53はR-Smad(Smad1,2,3,5,8)には結合するが、Co-Smad(Smad4)とは結合しないことが明らかになった。xp53-MOを注入して内在のxp53機能を阻害したところ、胚の体幹部および後方領域が著しく縮小した表現型を示した。また、背側および腹側の中胚葉マーカーの発現が減少していた。したがって、xp53は中胚葉形成に必要であることが明らかになった。以上のことから、xp53はツメガエル初期胚において、TGF-βシグナルと相互作用し、ホメオボックス遺伝子の発現を直接制御することによって中胚葉と体軸の形成を制御していることが分かった。
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