研究概要 |
SSER法(特許出願中)は特定遺伝子の機能部位において、完全にランダムな配列から機能配列のみをin vivoで選択する方法で、研究代表者が考案した全く新しい機能配列解析法である。本研究ではSSER法を用い、リポソームRNA (rRNA)の機能解析を行うことを目的とした。特に23S rRNAのペプチド転移反応と16S rRNAのコドン解読能に焦点をあてる。リボソームRNAの機能部位を完全にランダマイズし、リボソームの機能に必須な配列のみを細胞内で選択することによりリボソームRNAの機能を解析する。また迅速な選択であるため、リボソームの本質的な機能には影響しないものの、活性が低いがために自然選択で排除されてきたような、変異体を選択できる点が特徴でもある。したがって進化的な保存性からは見逃されていた真の機能的な保存性を知ることができ、rRNAの本質的な役割を抽出することができる。今年度は23S rRNA上のペプチド転移反応活性中心を重点的に解析しPループ(helix 80)、Aループ(helix 92)、ドメインV大ループなどについてライブラリーを作成し、完全にランダムな配列からリボソームの各機能に必須な配列を選択することに成功した。天然型を含むいくつかの配列がコンセンサス配列として選択され、結晶構造や生化学的な実験から得られた知見と矛盾しない結果であった。進化的に高度に保存されている部位にバリアントが得られ、本手法による解析が機能配列のみを選択する目的に優れていることを再確認した。いくつかの新しい知見の中で特に注目すべきは、結晶構造中では水素結合で連結されているA2451,A2450,G2061,C2063,C2501の5残基が、いずれも必須塩基として選択されたことである。この5残基からなる構造が、ペプチド転移反応の触媒活性の発現に特に重要であることを示唆する結果であると考えている。
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