研究概要 |
転写因子はさまざまな生体刺激に反応して,転写を活性化・抑制化することで標的遺伝子の発現を制御している.しかし,遺伝子発現の『ON』や『OFF』は,単純に転写因子自身の遺伝子発現の"all or nothing"の反応ではなく,タンパクとして既に"待機"している転写因子の活性調節が必須で,modificationによって精巧にチューニングされている. フォークヘッド転写因子FQXOファミリー(FKHR, AFX, FKHRL1)は,糖代謝や脂質代謝に重要なインスリン刺激でリン酸化を受けて,核外移行し時空間的制御のもとに不活性化される.しかし,細胞質へ移動したリン酸化FKHRはどのように制御されているのかは不明である.申請者は,『フォークヘッド(FOXO)ファミリー転写因子・FKHRが転写共役因子CBPと結合してアセチル化されることで,転写活性が抑制される』ことを発見し,【アセチル化=転写活性化】という定説を覆した.さらに申請者の研究から,FKHRはリン酸化と共役してユビキチン化される事が判明している(未発表).このように,FKHRは《多重修飾》を受けますが(FKHRの多重修飾と共役制御),その生理機能は不明である.そこで本研究は,以下の3点に焦点を絞り,『多重修飾による転写因子の制御変換調節』の生物学的意義を明らかにすることを目的とした. (1)ユビキチン化による転写制御機構の解明: (2)アセチル化による転写抑制機構の解明: (3)多重修飾の共役リレー制御の解明: 上記の目的を踏まえて,本年度はFKHRがプロテオソーム阻害剤MG132によって,HepG2における安定性が増強したことを明らかにした.さらに,インスリンによってユビキチン化が加速されることも明らかにした.今後は,ユビキチン化と転写活性化の関係を明らかにしていく予定である.
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