研究概要 |
出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いてAZCストレス下における異常・不用タンパク質の検知・処理機構、および異常タンパク質の生成回避機構を解明する目的で研究に着手し、以下の成果をあげた。 1.AZCが細胞に及ぼす影響を調べ、、AZCは主にプロリンパーミアーゼGap1によって細胞に取り込まれること、AZCによって細胞は生育が阻害されるが、長時間培養に伴い細胞死を起こすこと、などを明らかにした。 2.異常・不用タンパク質の検知・処理機構のモデルとして、我々が分離したAZC超感受性変異株について解析した。通常、Gap1はアンモニウムイオン存在下では不用になるため、Rsp5によってユビキチン化されるが、変異株ではRsp5の変異(Ala401Glu)によりその機能が低下し、Gap1がほとんど分解されないため、細胞内にAZCが過剰に取込まれ超感受性になることが判明した。また、Rsp5が各ストレス(アミノ酸アナログ、酸化、高温培養)に伴う異常タンパク質の処理に関与することも判明した。 3.異常タンパク質の生成回避機構のモデルとして、我々が見いだしたAZC耐性機構(Mpr1によるAZCのアセチル化、プロリンの細胞内蓄積)について解析した。まず、Mpr1は他の酵母にも広く存在しており、Mpr1によってN-アセチルされたAZCは新生タンパク質に取り込まれず、AZC耐性になると考えられた(Yeast,19,1437,2002;J.Biochem.,133,67,2003)。また、プロリン含量が増加したAZC耐性変異株を調べた結果、プロリン合成に関わるγ-グルタミン酸キナーゼの変異(Asp154Asn)により、プロリンが過剰に合成され、相対的にAZC濃度を下げるため、AZC耐性になると考えられた(Appl. Environ. Microbiol.,69,212,2003)。
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