研究概要 |
1)2GHzで作動するスプリット・リング共振器を作成し,LSCO系のアンダードープ2種類,最適ドープ1種類,過剰ドープ1種類(合計4種類)の組成の単結晶で複素インピーダンスの磁場・温度依存性を調べた。これによって,高温超伝導体の高周波の実験としては初めて,特定の理論モデルを用いずに,フリー・フラックスフロー状態を実現することができた。この理由は,磁束量子の運動に関する限り,周波数を一桁落とすことと磁場を一桁上げることは等価だからである。 2)実現したフリーフラックスフロー状態では,フラックスフロー抵抗は磁場の約1/3乗に比例し,そのベキは温度とともに変化する。磁場の1/3乗という依存性は,通常(S波)のフラックスフローと異なり,ギャップにノードを持つ超伝導体の特徴であると考えられる。 3)キャリヤードーピング,物質によらず,高温超伝導体の磁束格子コアーは「適度にクリーン」(コア内の準粒子の量子性がかろうじてわかる程度)であることがわかった。 4)ピン止め周波数が,測定する周波数によってかなり異なり,測定周波数が高いほど,ピン止め周波数が高くなることがわかった。これは,単純な調和ポテンシャル井戸の底での粒子の振動という描像がただしくないことを示唆している。ポテンシャルの非調和性,付随する非線形性などが関係していると思われるが,良くわからない。 5)磁束量子の粘性は,ドーピングがすすむと徐々に増大することがわかった。 6)Znを不純物として置換すると,ごく小さな有限の組成のところで,磁束量子の粘性が最大になることがわかった。現在その原因を考察中である。
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