本研究の目的は、高絶縁性の強誘電体極表面上に、本質的に存在する(=不純物等でなく強誘電体表面に固有)電子相を確定することである。このため、強誘電体(BaTiO_3)の原子的に制御された表面の基本的特性(=伝導特性)を超高真空中等の多様な雰囲気で測定する。まず、BaTiO_3表面に1格子ステップ(=最表面の格子まで結晶性を保つこと示す)を観察し、その表面に当該の電子層の存在を示唆する結果を世界で初めて得た。 今年度は、まずナノスケールの強誘電体表面の理論の基礎検討を行った。これにより、様々な条件下で表面電子系が発生する可能性が分かった。これを支持する電気伝導特性を、単結晶と薄膜で検討し一部を論文発表した(掲載予定)。この現象の理解のため、実験を続行中である。また、強誘電体が本質的に半導体的な特性を示す証拠として、極低温の光起電力等の測定を行った(投稿中)。本研究の遂行には、微細加工技術が重要であるが、この技術で特に有用であるイオンビームエッチングの検討を行い。損傷を少なくし且つエッチング効率を高める一般的な実験結果と理論を提出した。 本研究の中心課題であるBaTiO_3表面電子系の確認では、低温での実験では従来の結果以上のものは得られなかったが、室温からキュリー点の温度範囲の準超高真空中の表面電気伝導に、特異な温度特性が見出された。さらに、室温大気中の原子力間顕微鏡(AFM)測定では、1格子の原子ステップ像に重畳して、蛇行ストライプパターンが発見された。考察と計算の結果、表面電子系の静電遮蔽効果により可視化された180°ドメインであること結論し、原子分解能をもつ新しいドメイン検出法を提案できることが分かった。
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