研究概要 |
軌道整列酸化物結晶として本研究で注目したNd_<1-x>Sr_xMnO_3結晶は、ドープ量0.63≦xではc軸が長い正方晶(I4/mcm)およびCタイプ反強磁性を示し、3d(3z^2-r^2)タイプの軌道整列の可能性が示唆されている。また、中性子回折実験より、高温で正方晶から擬立方晶(R3c)への構造相転移が報告されている。この構造相転移は軌道整列の消失を伴うことが期待されることから、本研究では、軌道整列の消失を電気抵抗変化から検証するため、高温領域の電気抵抗率測定を行った。その結果、高ドープ領域(x≧0.60)において構造相転移に対応した絶縁体-金属転移を見いだした。これは正方晶から擬立方晶へ構造相転移することによってd(3z^2-r^2)タイプの軌道整列が消失することにより、3次元的伝導が回復したためであると考えられる。 また上記電気伝導の研究と平行して、超高速分光実験を行った。測定対象としたのは上記擬立方ペロブスカイト型マンガン酸化物に擬2次元性を導入した層状ペロブスカイト型マンガン酸化物(La_<2-2x>Sr_<1+2x>Mn_2O_7 x=0.33)である。光学応答は結晶のMnO_2面内における超高速時間分解反射率変化を測定した。その結果、光学応答が2成分からなることが分かった。1つは高速に立ち上がり(〜200fs),高速に緩和する成分(〜1ps)、もう1つは遅い立ち上がり時間を持ち(〜20ps),大きな温度依存性を持つ成分である。遅い成分は、キャリアから格子系へのエネルギー緩和によって生じた、格子系の非平衡状態を示す応答であると考えられる。
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