研究課題/領域番号 |
14042209
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武山 健一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (30323570)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
2003年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2002年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 内分泌撹乱物質 / 性ステロイドホルモン / エストロゲン / ERα、ERβ / 転写共役因子 / ダイオキシン類 / AhR / Arnt / エストロゲンレセプター / 転写制御 / 転写共益因子 / ダイオキシンレセプター |
研究概要 |
ダイオキシン類は発癌作用、免疫異常など多様な毒性を示し、これらの毒性作用の一つとして子宮内膜症の増悪の可能性など、主要な女性ホルモン・エストロゲン作用に対する撹乱作用の可能性が指摘されている。ダイオキシン類の毒性作用の多くは、転写調節因子であるダイオキシンレセプター(AhR)とパートナーArntのヘテロダイマーがリガンド依存的に標的遺伝子の転写制御により発揮されると考えられている。一方、エストロゲンの生理作用は核内レセプターに属する2つのエストロゲンレセプター(ER)αおよびERβを介した標的遺伝子の転写制御によって発揮される。これらERα,ERβやAhR/Arntなどの転写制御因子による転写調節において、p300をはじめとする転写共役因子群が複合体としてレセプターと基本転写装置との機能を仲介する過程が必須である。そこで我々は両者のレセプターが転写制御因子であることに着目し、ダイオキシン類によるエストロゲン撹乱作用の分子メカニズムを明らかにすることを目的として解析を行ってきた。 これまでに我々はAhR ligandである3-Methylcholanthrene(3MC)依存的にAhR/ArntがERsと複合体を形成することを見い出し、AhR/Arntがリガンド未結合ERの転写活性を正に制御することを報告した。一方AhR/Arntはリガンド結合ERに対してはその転写活性を負に制御することを見い出した。すなわち、AhR/Arntはリガンド未結合(不活性型)ERの転写活性を正に、リガンド結合(活性型)ERを負に制御する、2通りの撹乱メカニズムが考えられた。そこで本研究はAhR, ER両者の転写活性化依存的な分解機構に着目した。 その結果MCF-7細胞において、E2有無に関わらず3MC依存的にERα発現量が減少した。MG-132がこの減少を抑制することから、ERαがproteasome経路で分解されていると考えられた。さらに3MC依存的にERαがubiquitin化を受けること、この3MC依存性ERα-ubiquitin化はE2依存性ERα-ubiquitin化と相乗的に作用することを見い出した。このAhRを介したERα転写抑制はこの協調作用が生じるときのみ見られた。一方、両者のアンタゴニストではこの作用は認められなかった。このことから、AhR, ERαが両者のアゴニスト結合時に複合体を形成、更に転写活性化依存的に作用するubiquitin ligase複合体をリクルートすることでERαの分解、それに伴う転写抑制が誘導されると考えられた。本研究からアゴニストによるAhRの転写活性化はERタンパクのproteasome依存的分解を誘導し、ERの転写活性化は更に分解を協調的に促進する抑制メカニズムを見出した。この際AhR/Arntと結合したERαがAhRと共にubiquitin化を受け分解されることにより、ERα活性の抑制が起きている可能性を示唆した。
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