研究概要 |
大豆に含まれるゲニステイン、ダイゼイン等のイソフラボンは代表的な植物エストロゲンであり、循環器系疾病や骨粗鬆症などの予防に期待がもたれる。しかし、動物実験において女性生殖器系癌の増加が報告されている。本研究では、大豆イソフラボンによる毒性機構を解析し、以下の知見を得た。また、アルコール摂取が乳癌の発生を増加させる一要因として、アルコールの代謝物の1つであるサルソリノールについて検討した。 (1)ゲニステイン、ダイゼインはエストロゲン感受性乳癌細胞(MCF-7)で増殖活性を有し、表面プラズモン共鳴バイオセンサーによりエストロゲンレセプターを介する機構であることを示した。しかし、ゲニステイン、タイゼインともにDNS損傷性は認められなかった。その代謝物である5,7,3,4-tetrahydroxyiosoflavoneと7,3,4-trihydroxyiosoflavoneでは細胞増殖活性はゲニステイン、ダイゼインに比べ弱かった。一方、これらの代謝物では正常乳腺細胞株(MCF-10A)において酸化的DNA損傷である8-OHdGの上昇が認められた。大豆イソフラボンにおいては、代謝物が発がんのイニシエーションに、イソフラボン自身がプロモーションに関与すると考えられる。サプリメント等による大豆イソフラボンの過剰な使用は女性生殖器系がんの誘発が懸念される(BiochemIstry,43,2569-2577,2004)。 (2)サルソリノールはアルコールの有害代謝物アセトアルデヒドと生体内物質ドーパミンが縮合して生じる。サルソリノールで処理したHL-60細胞では8-OHdGが上昇したが、その過酸化水素耐性株HP100では増加が認められず、過酸化水素の関与が示唆された。また、MCF-7細胞で増殖活性を有した。アルコールによる乳癌の発がん機構にサルソリノールが関与する可能性が示された。
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