研究概要 |
鳥類における内分泌撹乱物質の生体内動態と生殖機能に及ぼす影響を明らかにするため,(1)内分泌撹乱物質をニホンウズラに摂取させ、これの生体内での動態と卵への移行を明らかにした。(2)これらの物質を摂取したウズラの当該世代及び次世代の雌雄生殖機能に対する撹乱作用を追究した。母鳥に経口摂取させたノニルフェノール(NP)は,血液,肝臓,糞および卵黄中で検出され,NPは消化管から吸収されると血液を介して卵黄へ移行することが明らかとなった。検出された量は投与量に依存して増加した。2mgNP投与区では卵黄中に約1ng/g濃度であった。次に,母鳥にコーン油または10mgのNPを1回投与した区では,F1の雄性腺は精細管構造で満たされた髄質とこれを囲む白膜からなっており,正常な精巣の構造を示した.しかし,1mgまたは10mgのスチルベステロール(DES)を1回または2回経口投与,または10mgのNPを2回投与した母鳥から得られたF1の雄性腺では卵精巣の形成が認められた。卵精巣は疎性で細胞成分に富む皮質と精細管を含む髄質からなっていた.皮質には卵子とこれを囲む1層の顆粒層細胞様細胞からなる卵胞様構造が認められ,これらの多くは正常な組織像であったが,一部の卵子はアポトーシス像を示した。髄質の精細管上皮はセルトリ細胞と精細胞からなり,これらと間質細胞は正常な像を示した.卵巣にはERαとβのmRNAの発現が認められた。これらの結果から,母鳥が経口摂取した化学物質は血液を介して卵黄中に移行することが明らかにされた.経口接種したDESも卵黄中に移行すると考えられ,F1の雄性腺に対して分化の障害をもたらし,精細管と間質で構成される髄質と卵胞構造を含む皮質からなる卵精巣が形成されることも明らかにされた。NPの作用はDESより弱いものの卵精巣の形成が認められたので,NPにはエストロジェン作用があるものと考えられた。
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