研究概要 |
1.エストロゲンレセプター(ER)によるリガンド依存的な転写調節には、正負それぞれの方向においていくつかの転写共役因子が関わっている。成熟マウスの子宮、膣における、ホルモン投与後のERといくつかの転写共役因子のmRNAの発現変化を調べた。3μgのdiethylstilbestrol(DES)を1回投与すると、子宮、膣のERα,ERβ,SRC-1,GRIP1,SRC-3およびP300のmRNAの発現は減少する傾向を示した。RIP140のmRNA発現はDESを投与して3時間後に一過性に増加し、その後減少した。2mgのbisphenol-A (BPA)を1回投与しても、DESと同様の結果が得られた。以上より、卵巣摘出成熟マウスの子宮、膣において、DESまたはBPA投与によってRIP140の発現が一過性に誘導されることが明らかとなった。このRIP140のmRNAの発現誘導は、DES、BPAともに濃度依存的であった。また、抗RIP140抗体を用いた免疫組織化学法を行ったところ、子宮および膣の上皮において、強い陽性反応を示す細胞が認められた。さらに、DESまたはBPAの1回投与により、間質や平滑筋層で陽性細胞が増加する傾向が見られた。ERαKOマウスにDESまたはBPAを1回投与しても、転写共役因子のmRNA発現には変化はなかった。ERおよび転写共役因子のmRNA発現のパターンがDESとBPA投与とで類似していることから、DESとBPAのマウス生殖器官への作用メカニズムに共通点があることが考えられる。さらにERαKOマウスを用いた実験結果は、DESおよびBPAによる転写共役因子の発現調節にERαが関与していることを強く示唆している。 2.卵巣摘出後の子宮、膣の退縮は、アポトーシスによるものであり、その際、TNF-αおよびFASが関与していることを明らかにした。
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