研究概要 |
昨年に引き続き、クサガメ(Chimemys reevesii)及びカワウ(Phalacrocorax carbo)の雌性指標遺伝子vitel-logenin(VTG)のクローニングを行った。その結果、クサガメから、743アミノ酸をコードする2,229bpのVTG cDNA断片(CRVTG)、カワウから371アミノ酸をコードする1,253bpのVTG cDNA断片(PcVg3')のクローニング及び塩基配列の決定に成功した。決定された塩基配列を元にクサガメ及びカワウのVTGに特異的なプライマーを作製し、半定量的なRT-PCRにより以下の2点を検討した。 1)幼若クサガメ4個体に対し、500μg/kg B.W.の17β-estradiol (E_2)を体腔内に単回投与し、投与前、投与後6、12,24,48時間目および5、8、16日目に採血および肝臓部分切除術を行い、RT-PCRにより肝臓でのVTG mRNAを、クサガメVTG mAbを用いたウェスタンブロッティングにより血清中VTGの発現量を解析した。その結果、E_2を投与した6時間後には、投与前と比較して有意にVTG mRNAが誘導され、24時間後には最大の発現を示した。その後、VTG mRNAの発現は、48時間後から緩やかな減少傾向を示し、投与の8日後には、投与前の発現量まで減少した。一方、血清中VTGタンパクの発現は、E_2投与後8日目に有意な増加を示した。この事から、VTG mRNAはE_2曝露が最近あったことの指標として有効であることが示された。 2)三重県から、繁殖期に当たる、4月下旬に捕獲したカワウ(オス7個体、メス5個体)について、β-actin mRNAを内部標準とした、VTG mRNAの半定量的RT-PCRを行った。その結果、本来、発現がほとんど認められないと予想されるオスでも、VTG mRNAの発現が認められた。さらに、驚くべき事に、VTG mRNAの発現の雌雄差をt-検定により解析したところ、P<0.05を有意とした場合、雌雄差は認められなかった。このことから、カワウのオスに雌性化が起こっていることが示唆された。 さらに、クサガメのDMRT1及びカワウのVTGについては、pGEX4T2ベクター及びBL21(DE3)によるタンパク発現を試み、それぞれのタンパクの発現が確認された。現在、抗体作成に向けて、タンパクの精製を行っている。
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