研究概要 |
本研究課題において,平成14年度では非リガンド性constitutive active型のエストロゲンレセプター(caERαまたはcaERβ)の組換えアデノウイルスを作製しgain of functionした場合,マウス子宮において種々の分子マーカーのup-regulationやdown-regrationが観察され,これら分子マーカーの発現はERα特異的またはERβ特異的に,制御されている応答遺伝子が存在することを示唆した.また,これらの組換えウイルスを利用して,ERの下流応答遺伝子であるPP5(Protein Phosphatase 5)がNegativeにERの転写を制御していることを明らかにした(Mol.Endocrinol,2004).平成15年度においては,caERα,caERβのcTg (LGFPαとLDsRedβ)マウスの作製にそれぞれ成功し,少なくともこれらのcTg (conditional Transgenic)マウスの数ラインでレポーター遺伝子を発現していることが確かめられた.さらに,cTg (LGFPα)マウスにCreを発現する組換えアデノウイルスベクターを導入遺伝子することにより,卵巣において異所的なヒトERαの発現を確認し,外来性ERαの発現する部位において黄体様の組織が観察された.これらの黄体様の組織においては,ERの下流応答遺伝子である内在性のPRのup-regulationが観察された.マウス受精卵の2細胞期から発現が可能なCAGプロモーター支配下にCreを発現するTgマウスを既に作製し,cTgマウスに交配することにより,過剰なERαまたはERβのシグナルが如何に初期発生・成長に関与するか,内分泌攪乱物質でかく乱されたエストロゲンシグナルの生体作用機構のモデルが完成した.その他の結果として,ERの下流応答遺伝子の1つであるefp (estrogen finger protein)が乳癌細胞において14-3-3sigmaの分解に関与し,乳癌細胞の増殖に関与することを発見した(nature,2002)等の結果が得られた.
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