研究概要 |
昨年度の本研究において、ベンゾフェノン類のエストロゲン活性を酵母Two-Hybrid試験により試験したところ、ベンゾフェノン水酸化体19化合物中15化合物で活性がみられ、そのうち4化合物はビスフェノールAよりも強い活性を示した。そこで今年度は、チャイニーズハムスター卵細胞にヒトエストロゲンレセプターα(ERα)あるいはヒトアンドロゲンレセプター(AR)を組み込んだレポータージーンアッセイ系であるERα-およびAR-EcoScreen(大塚製薬)を用いて、ベンゾフェノンおよびその水酸化体のエストロゲン活性および抗アンドロゲン活性を調べた。その結果、ベンゾフェノンを含む18化合物でエストロゲン活性が見られ、中でも2,4,4'-trihydroxybenzophenone、2,4-dihydroxybenzophenone、3-hydroxybenzophenone等ではビスフェノールAとほぼ同等の活性であった。3または4位に水酸基をもつと活性が強く、2位のみでは活性が低い構造活性相関がみられた。本法と酵母Two-Hybrid試験で得られた活性強度には相関が見られた(r=0.79)が、両環に配位した水酸基の影響に相違がみられた。また、誘導された発光強度がエストラジオール(E_2)を上回るスーパーアゴニズムが多くの化合物で観察された。一方、抗アンドロゲン活性においては17化合物で活性が見られた。2,4,4'-trihydroxybenzophenone、2,2',4,4'-tetrahydroxybenzophenone等の活性が強く、これらはp,p'-DDEとほぼ同程度であり、IC_<50>の前後の化学物質濃度で細胞活性は70%以上あり、細胞毒性の影響はほぼみられなかった。これらのエストロゲン活性と抗アンドロゲン活性の強度には相関がみられた(r=0.68)。 これらのベンゾフェノン水酸化体のうち、食品用器具・容器包装の紫外線吸収剤として使用される2-hydroxy-4-methoxybenzophenone、2,2'-dihydroxy-4-methoxybenzophenoneについて、製品中の残存実態を調査したところ、ポリエチレン50検体、ポリプロピレン39検体、ポリスチレン25検体、ポリ塩化ビニル39検体、ポリ塩化ビニリデン7検体からは検出されなかった。しかし、ところてんの包装容器(ポリ塩化ビニル製、1997年購入)から前者が70μg/g検出された。このほか、ベンゾフェノン水酸化体は日焼け止めや化粧品に使用され、またベンゾフェノンが体内で代謝されて生成することから、内分泌かく乱作用および人への暴露についてさらに検討が必要であろう。
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